会計監査の楽しみ

企業というのは生き物です。人間のようでもあります。内部統制は免疫に似ていますし、経営は頭脳、ITは神経のようにも思えます。
監査というのは財務諸表を対象にしているようで、実はその奥の企業そのものを対象にしています。
監査人というのは、企業の医者のようなものであると思っています。

健康診断に医者の診察があるように、プロフェッショナルの診察が監査にも、いや監査だからこそ必要なのです。
そのためには動いている企業の生きざま、構造をよく理解することが求められています。
生き物である企業の特徴は、お互いにつながっていることです。棚卸資産という資産の監査をするとしましょう。原材料が増えるのは購買活動で、減るのは生産活動への投入です。製品が増えるのは生産活動の結果であり、減るのは販売活動の結果です。販売活動で製品は売掛金に変換していきます。
勘定残高というのは、このようにつながった活動の結果なのです。

人間では、外から入ってくるのは、食べ物、飲み物、空気があり、生きるため、つまり身体が生きるためには必要ですが、音、光、香り、風、味覚、触感なども大切な情報です。身体の栄養と頭の栄養、心の豊かさなどがそうして作られるのですが、そこに必要なのは、つながりと言えます。過去から現在へのつながりは、未来の糧になり、人とのつながりは、愛と連携を産むと同時に人を安心させ、成長させます。

企業もモノ、カネ、情報など必要ですが、企業哲学や生き方はさまざまです。しかし共通点は、企業は一人では生きていけないという真実です。お客様、取引先、従業員、金融機関などさまざまな人が関わり合って生きていき成長していきます。

その各々の機能が貴重であり、お互いに必要とされるのです。
健全な企業とはこうした連携がうまく動いています。頭にあたる経営管理も経営者の心(哲学)を反映していますので、経営者の声を注意深く聴き、正確に理解することも必要です。

企業の医者としての監査人になろうとすると、企業をよく理解することがまず第一に必要になってきます。
企業は常に動き、変化していきますが、それに追いついていくのに大切なのは先入観のない感性ではないかと感じています。

監査人は治療をしませんが、企業の悪いところを感じる感性を持つことが肝要です。こうした理解には心の通い合った監査チームが必要になってきます。
監査チームがバラバラだと、情報が分断されてきますので、企業の大切な機能のつながりが見えません。そうすると企業をわからないまま、感じないまま監査結果を出してしまいがちです。
企業の理解にも監査チームの連携にも必要なのは相手への関心ではないかと思います。

会計監査でなく企業監査に、バラバラ監査でなく有機的つながりを理解した監査に価値があると考えています。
こうした名医監査人になるために必要なものは、相手への敬愛、自分の仁徳ではないかと思っています。

チームの温かさ、つながりを感じ、企業の生きざまを感じることのできる会計監査(企業監査)は楽しい仕事だと思っています。
PwC京都監査法人では、お互いを尊敬し、オープンにつながろうとしています。その輪に入ってくれる謙虚で愛情あふれる人を求めています。